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賃貸の火災保険は自分で選べる?勧める側の実情と切替の手順

賃貸の契約時、初期費用の見積もりに当然のように入っている「火災保険:2年で2万円」。これ、原則として自分で選んで構わないと知っていますか。

私は売買がメインの現役不動産営業(6年半)です。不動産業界は保険を「勧める側」なので、その内側の実情も含めて正直に書きます。そのうえで、自分で選ぶ場合に絶対に外してはいけない補償も説明します。安くすることだけを考えて補償を欠くと、本末転倒どころか大事故になる分野だからです。

目次

なぜ不動産屋は火災保険をセットで勧めるのか

内側の実情から。不動産会社の多くは保険代理店を兼ねていて、契約時に自社取り扱いの保険をセットで案内します。代理店なので、成約すれば手数料が入ります。

ただ、これを「ぼったくり」と切り捨てるのはフェアではありません。セット案内には「全入居者が確実に、必要な補償内容で加入している状態を作る」という貸主側の実務上の必要性があります。火災保険は借主本人のためだけでなく、大家と隣人を守る仕組みでもあるからです(後述の借家人賠償の話です)。

ここは自店の話も交えて正直に書きます。私の勤務する店舗では、最初から複数の火災保険プランをお客様にお見せして、選んでもらっています。それで実務は何も困りません。逆に言うと、決め打ちで高いプランしか出してこない賃貸屋は、補償の必要性ではなく手数料を見ている。これが内側の見方です。

問題は、その保険があなたの家財の量や状況に対して過剰な補償・割高な保険料になっていることがある点です。だから「加入は必要、商品は選べる」が正しい理解になります。

「加入義務」はどこまで本当か

  • 火災保険の加入自体は法律の義務ではありませんが、賃貸借契約の条件として加入が義務付けられているのが普通です。これは有効な契約条件で、「保険に入らない」という選択肢は実務上ありません
  • 一方、「特定の保険商品への加入」まで強制できるかは別問題です。契約条件(借家人賠償◯千万円以上など)を満たす保険であれば、自分で選んだ商品でよいケースが多数派です
  • ただし、契約書・重説に「指定保険への加入」が明記され、それが契約条件になっている物件も存在します。まず契約書を確認し、「同等の補償内容の保険を自分で契約する形でもよいですか」と確認するのが正しい手順です

イメージとしては、自動車の自賠責保険だと思ってください。「入らない」という選択は実質ありえません。たまに「私は家財の補償なんていらない」という方がいますが、その考え方は視野が狭いです。賃貸の火災保険は、自分の家財より「大家さんに対する補償」がメインだからです(次のセクションの借家人賠償の話です)。

外してはいけない補償の3点セット

自分で選ぶ場合、この3つが揃っているかだけは必ず確認してください。

①借家人賠償責任補償(大家に対する補償・最重要)

火事や水漏れで借りている部屋そのものに損害を与えたとき、大家への賠償をカバーする補償です。賃貸の火災保険の本体はここだと思ってください。契約条件で「借家人賠償1,000万円以上」などと指定されていることが多いので、金額の下限は契約書に合わせます。

②個人賠償責任補償(他人に対する補償)

洗濯機のホースが外れて階下を水浸しにした、自転車で人にケガをさせた。日常生活で他人に与えた損害を広くカバーします。集合住宅の水漏れ事故は数百万円の賠償になることがあり、保険料のわりに守備範囲が広い、費用対効果の高い補償です。クレジットカードや自動車保険の特約で既に持っている場合は重複に注意してください。

③家財補償(自分の持ち物への補償)

火災・水漏れ・盗難などで自分の家財が損害を受けたときの補償です。ここが保険料の調整弁になります。セット販売の保険は家財補償が数百万円で設定されていることが多いですが、単身で家財が少ないなら、実態に合わせて下げれば保険料も下がります。逆に家族世帯は安易に削らないほうがいい部分です。

自分で選ぶ・切り替える手順

  1. 契約書・重説で条件を確認。「指定保険か、同等条件で可か」「借家人賠償の下限額」
  2. 管理会社・仲介に確認。「借家人賠償◯◯万円以上を満たす保険に自分で加入する形でもよいですか」と聞く。新規契約時が一番通しやすいタイミングです
  3. 3点セットの条件で商品を比較。ネット完結型の賃貸向け火災保険は年数千円台からあります。比較の軸は保険料だけでなく、借家人賠償の上限額・水濡れ原因の範囲・破損汚損の有無など補償範囲で
  4. 加入証明(付保証明)を提出。貸主側が求める場合は、保険会社が発行する証明書を管理会社へ送ります
  5. 更新時の切り替えも可能。入居時は言われるまま加入した人も、保険の満期(多くは2年)ごとに切り替えのチャンスがあります。今の保険の満期日をまず確認してください

そして、実務の小技をひとつ。入居時の火災保険は、商品もプランも決め打ちで選ばせてもらえないことが実際には多いです(本当はダメなことなのですが)。その場合でも、入居後に高い保険を解約して、契約条件を満たす安い保険に入り直すことは、許可されることが多いです。入口で選べなかった人にも、入ってからの切り替えという道が残っています。

契約時から自分で選んだ保険にしたい場合は?

交渉すること自体は全然ありです。ただ、実際にその交渉が通るかどうかは別問題で、私の感覚では、管理会社や貸主が大手であるほど通りません。この場合、無理に交渉を重ねても結果は変わらないので、「そのお部屋をどの程度借りたいのか」で判断するのが現実的です。どうしても借りたい物件なら、契約時の条件は飲むしかないのが実情です。そのうえで、先ほどの入居後の切り替えを狙ってください。

火災保険の保険料の相場感と「払いすぎ」の判定は、賃貸の火災保険2年の相場で詳しく扱っています。

なお、家を買ったときや実家を相続したときの火災保険は、ここまでの話とは構造がまったく別物になります。そちらは購入・相続した家の火災保険は言い値で入るなにまとめています。

注意:安くすること自体が目的ではない

実務で強調しておきたいのはここです。賃貸の火災保険で一番怖いのは、保険料の数千円ではなく、事故のときに借家人賠償が足りない・付いていない状態です。もらい火では隣家に賠償請求できないケースがある(失火責任法)一方、大家への原状回復義務は残る。賃貸の保険はこの構造のためにあります。

「安くなった」だけで満足せず、3点セットと金額条件を満たしているかを最後にもう一度確認してください。

まとめ

  • 加入は実質必須。ただし商品は自分で選べるケースが多数派
  • 確認の順番は、契約書→管理会社へ確認→3点セットで比較→証明書提出
  • 外せないのは借家人賠償(金額は契約条件に合わせる)・個人賠償・家財の3点
  • 入居時に選べなくても、更新(満期)ごとに切り替えチャンスがある

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や保険募集を目的とするものではありません。補償内容・可否の判断は各保険会社の約款と賃貸借契約の内容をご確認ください。

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この記事を書いた人

売買がメインの現役不動産営業(6年半)・FP3級。査定の現場で「売れません」と伝える側の人間。空き家・相続・退去トラブルの相談を受ける日々の中で見えた「本当のところ」を、忖度なしで書くために匿名で運営しています。

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