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夜逃げされた部屋はどうなる?オーナーと後処理をした話【実話】

夜の家の前に洗濯機がひとつ置き去りにされているイラスト

「夜逃げ」という言葉は知っていても、夜逃げされた部屋のその後を知っている人はほとんどいないと思います。

私は売買がメインの現役不動産営業ですが、以前、付き合いのある物件オーナーのところで夜逃げが起き、その後処理に関わったことがあります。この記事はそのときの実話です。なお、関係者が特定されないよう、時期・場所・細部は意図的に変えてあります。その前提で読んでください。

目次

ある日、家賃が止まった

始まりは、大家さんからの一本の連絡でした。「今月の家賃が振り込まれていないんです」。すぐに家賃保証会社へ事故発生の連絡を入れて、この物語は始まりました。

嫌な予感は最初からありました。この段階で、すでに入居者とは連絡が取れなくなっていたからです。電話も出ない、折り返しもない。以後の流れは、家賃保証会社とオーナーさんを交えて調整していくことになりました。

ちなみにこのオーナーさんは割と寛大な方で、「家賃が払えない理由があるなら、相談してもらえればいいのに」というスタンスの人でした。この言葉、あとでもう一度出てきます。覚えておいてください。

「もぬけの殻」でも、勝手に踏み込めない

ここで多くの人が意外に思うポイントを先に書きます。家賃が入金されず、入居者と連絡が取れなくても、オーナーは自分の貸家に勝手に踏み込むことすらできません。

部屋の中の物は借主の所有物ですし、契約も解除の手続きを踏むまでは生きています。オーナーが実力で鍵を開けて片付けてしまう行為は「自力救済」といって法律上認められておらず、後から損害賠償を請求されるリスクすらあります。理不尽に聞こえるかもしれませんが、これが現実のルールです。

後処理のリアル:家賃滞納4ヶ月、警察、そしてハプニング

実際の流れはこうでした。まず家賃保証会社が督促業務を進めます。それでも反応がなく、滞納が4ヶ月に達した段階で、ようやく本格的に動き出すことになりました。夜逃げの後処理は、とにかく時間がかかるんです。

次の段階は警察同伴での安否確認です。中で亡くなっている可能性もゼロではないので、勝手に開けるのではなく、警察に立ち会ってもらって室内を確認する。結果、人はおらず、生活の痕跡から「夜逃げである」と断定されました。ここから建物明渡訴訟へ進む、はずでした。

ですが実際には、ちょっと面倒なことが起こって明渡訴訟までは進めず、そうこうしているうちに家賃保証会社の保証期間も切れてしまうというハプニングに見舞われました(詳細は書けませんが、夜逃げ案件は教科書どおりに進まない、とだけ)。それでも最終的には夜逃げした借主の居場所と連絡先を特定し、大家さんとの退去立ち会いをするところまでは持ち込めました。

部屋に残されていたもの

警察との安否確認で踏み込んだ室内は、正直、拍子抜けするほどスッキリしていました。この夜逃げ人は物を全部置いていくタイプではなく、ほとんどの生活用品を持って出た、計画的な夜逃げだったんです。

残っていたのは、洗濯機と、細かいゴミと、猫の爪痕でボロボロになったクロス。それだけでした。がらんとした部屋の壁一面の爪痕を見たときの、なんとも言えない気持ちは今でも覚えています。生活は計画的に畳んで消えたのに、そこに生き物と暮らした跡だけが残っている。夜逃げの現場というのは、そういう妙な生々しさがあります。

お金の話:夜逃げのツケは誰が払うのか

夜逃げの後処理には、実際にお金がかかります。一般的には次のような費目です。

  • 未回収の滞納家賃
  • 残置物の撤去・処分費用
  • 原状回復・クリーニング費用(このケースでは爪痕だらけのクロス張り替えも)
  • 法的手続きが必要になった場合の弁護士費用・執行費用
  • 空室期間の逸失賃料

このケースの結末を書きます。退去立ち会いの場で、夜逃げ人は滞納家賃と精算金を分割で支払うことに同意しました。そして、その後また音信不通になり、結局1円も振り込まれなかったそうです。

そのときオーナーさんが、疲れた顔で言った言葉が忘れられません。「まあ、中で孤独死とかしてなくて、まだよかったです」。何ヶ月も振り回されて、お金も戻らず、それでもそう言える。大家さんという商売の背負っているものを見た気がしました。

ちなみに「連帯保証人がいれば安心では?」と思うかもしれませんが、正直に言って、夜逃げをするような人の連帯保証人は、まったく当てになりません。連絡がつかない、払えない、そもそも関係が切れている。「類は友を呼ぶ」とは、核心を突いた言葉だと思います。

言いにくいことを言います:夜逃げは、逃げた側が100%悪い

あまり厳しいことは言いたくありませんが、この件に関しては断言します。夜逃げは、逃げる人が100%絶対悪です。

大家も人間です。あのオーナーさんのように、相談さえあれば、まだなんとかなる可能性があります。家賃を待つ、分割にする、退去の段取りを一緒に考える。現場では実際にそういう着地がいくらでもあります。

ですが、音信不通で逃げた瞬間、その人は大家・家賃保証会社・管理会社・仲介会社のすべてから敵とみなされます。少なくとも私は、そういう人をお客様とは思いません。それくらい、夜逃げは残された全員を傷つける行為です。

もし経済的に苦しいなら、必ず、早めに、家賃保証会社や大家さんに相談してください。自治体には住居確保給付金など、家賃が払えない人のための公的制度もあります。夜逃げは「全部がさらに悪くなる選択肢」でしかありません。滞納の記録も債務も消えず、住民票を動かせない生活は仕事も社会保障も細らせます。

余談:役所が「夜逃げ資金」を出していた話

最後に、この件でいちばん腹が立った話を。あとから分かったことですが、この夜逃げ人は生活保護を受けており、転居費用として役所から合法的にお金を受け取って、それを夜逃げの資金にしていました。役所は知らなかったとはいえ、結果的に夜逃げに加担した形です。あれは本当に腹が立ちました。

制度そのものは、住まいに困る人を守るための大事な仕組みです。ただ、こうやって悪用する人間がいて、おそらくこの手の「夜逃げスキーム」はその界隈で出回っているのだろうと思います。真面目に制度を使っている人と、真面目に貸している大家さんの両方が損をする。現場からは、それだけ言わせてください。

おわりに

夜逃げの後処理を通じて私が学んだのは、法律の知識でも督促の手順でもなく、「連絡が取れる」ということ自体に価値がある、という当たり前のことでした。困ったときに一本連絡を入れられるかどうかで、その後の人生の壊れ方がまったく変わります。

部屋は、ただの箱ではなく生活の器です。それを扱う仕事をしている以上、こういう話も正直に書いていこうと思います。住まいのお金とトラブルについては、賃貸トラブル対処まとめでも扱っています。


【免責事項】本記事は筆者の実体験に基づくコラムですが、関係者保護のため時期・場所・詳細は変更しています。法的手続きに関する記述は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の事案は弁護士等の専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

売買がメインの現役不動産営業(6年半)・FP3級。査定の現場で「売れません」と伝える側の人間。空き家・相続・退去トラブルの相談を受ける日々の中で見えた「本当のところ」を、忖度なしで書くために匿名で運営しています。

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