2年に一度やってくる「更新料」の請求。家賃1ヶ月分となると決して小さくない出費ですが、「そもそもこれは何のお金なのか」を説明されたことがある人は少ないと思います。
私は売買がメインの現役不動産営業(6年半)です。業界の内側から見た更新料の実態として、相場、地域差、そして交渉の余地について解説します。
更新料とは:法律で決まったお金ではない
更新料は、契約期間(多くは2年)が満了して契約を更新するときに、借主から貸主へ支払うお金です。まず知っておいてほしいのは、更新料は法律で定められた費用ではなく、契約の特約によって発生する慣行だということです。
つまり、契約書に更新料の定めがなければ、支払う義務はありません。逆に、契約書に明記されていて金額が過大でなければ、有効な約束として支払い義務があります(最高裁が2011年に、更新料特約は高額すぎるなどの事情がない限り有効と判断しています)。
では、何に対して払っているお金なのか
ここが一番説明されない部分です。実は先ほどの最高裁判決(2011年)は、有効かどうかだけでなく更新料の性質にも踏み込んでいます。判決は更新料を、「賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質」を持つものとしました。
実務の言葉に直すと、こういうことです。
- 家賃の一部を、まとめて後から払っている。更新料がある物件は、その分だけ月々の家賃を低く設定できます。貸主から見れば、更新料は家賃と並ぶ収益の一部です
- 契約を続けさせてもらうことへの対価。更新料を払うことで、借主は揉めることなくそのまま住み続けられる。判決もこの点を挙げています
逆に言えば、更新料は「更新の手続き代」ではありません。事務手数料のようなものだと思っていると、家賃1ヶ月分という金額に納得がいかなくなります。実態は家賃の一部です。だから後半で書く「2年間の総額で比較する」という見方が効いてきます。
更新料の相場:目安は「2年ごとに家賃1ヶ月分」だが地域差が大きい
首都圏の賃貸では「2年契約・更新料は新賃料の1ヶ月分」が最も一般的なパターンです。ただし、更新料は全国一律の慣行ではありません。地域差がかなり大きいお金です。
| 地域の傾向 | 実情 |
|---|---|
| 首都圏・東京 | 1ヶ月分/2年が主流。更新料ありの物件が多数派 |
| 京都 | 更新料の慣行が強く、水準も高め(1年ごとの物件もあり) |
| 大阪など関西圏 | 更新料なしの物件が多い(かわりに敷引きや礼金の慣行) |
| 更新料の慣行がない県 | そもそも徴収しない地域も複数ある |
国交省の民間賃貸住宅に関する調査でも、更新料の徴収率は都道府県によって大きく異なることが示されています。「更新料は当たり前」でも「更新料は違法」でもなく、「地域と契約による」が正確な理解です。
ただ、この表に現場の肌感をひとつ足しておきます。大阪でも、コロナ禍のあたりから更新料を採用する物件が増えてきた印象です。それ以前は、一般の居住用物件で更新料を見かけることはあまりありませんでした。
「関西は更新料なし」は傾向としては今も正しいのですが、昔の感覚のまま「大阪だから更新料はないはず」と思い込むのは危ないということです。地域の慣行ではなく、目の前の契約書で確認してください。
更新料と別に「更新事務手数料」が乗ることもある
精算書をよく見ると、更新料(貸主へ)とは別に「更新事務手数料」(管理会社・仲介会社へ)が計上されていることがあります。0.25〜0.5ヶ月分程度が多い印象です。これも契約書・重要事項説明書に根拠があるかを確認してよい費目です。あわせて、更新のタイミングでは火災保険と保証会社の更新料も同時に来ることが多いので、総額で把握しておくと慌てません。
この更新事務手数料も、私の感覚ではここ数年で見かける頻度が増えています。
ついでに業界の内側の話をひとつ。実は賃貸の仲介をすると、契約のときに私たち仲介会社が管理会社へ「契約事務手数料」を取られることがあります。しかも契約書類を実際に作るのは、客付けをした私たち仲介側です。手数料は取られるのに、作業はこちらがやる。正直、カツアゲに近い制度だと思っています。
なぜこの話をするかというと、「事務手数料」という費目そのものが業界全体で増えているからです。借主が払う更新事務手数料も、その流れの中にあります。だからこそ、根拠が契約書・重要事項説明書にあるかを確認する意味があります。
払わないとどうなるか
契約書に有効な更新料特約がある場合、支払いを拒否したまま放置するのはおすすめできません。債務不履行の状態になり、程度によっては契約解除の理由とされるリスクがあります。
一方で、「更新の書類を出し忘れて期限が過ぎた」場合はどうなるか。契約は自動的に終わるわけではなく、法定更新といって従前と同条件(期間の定めなし)で継続するのが原則です。ただし法定更新時の更新料の扱いは契約の文言によって争いになりやすいところで、ここは深追いせず、更新手続きはきちんと期限内に行うのが実務的には無難です。
更新料に交渉の余地はあるか。内側からの実感
正直に書くと、更新時は借主の交渉力が相対的に強いタイミングです。貸主側から見ると、退去されると原状回復・募集広告・空室期間で家賃数ヶ月分のコストがかかります。長く住んでいて滞納のない借主は、失いたくない相手です。
そのうえで、現実的な交渉ラインは次のあたりです。
- 更新料そのものの減額・免除の相談。「更新料が負担で、更新か住み替えか迷っている」と正直に伝える形。通るかは貸主次第ですが、言うだけならリスクはほぼありません
- 更新料は払う代わりに家賃や設備の相談。「更新はするので、経年で傷んだ◯◯の交換をお願いできないか」は、実務でも通りやすい組み合わせです
- 家賃値上げとセットで来た場合。値上げへの対応は別記事(家賃値上げの断り方)で詳しく解説しています
注意点として、交渉は更新期限に余裕をもって、丁寧に。期限ギリギリの強硬な出方は、貸主側の心証を悪くするだけで得がありません。
これから部屋を借りる人へ:更新料は「2年総額」で比較する
物件選びの段階なら、家賃だけでなく2年間の総額(家賃24ヶ月+更新料+礼金+保証料など)で比較してください。家賃が3,000円安くても更新料1ヶ月分があれば、2年総額では逆転することがあります。契約前に確認する項目は賃貸契約の注意点にまとめています。
まとめ
- 更新料は法定の費用ではなく契約の特約。契約書に定めがなければ払う義務はない
- 相場は首都圏で「2年ごとに1ヶ月分」。ただし地域差が非常に大きい
- 有効な特約がある場合の不払いはリスク。一方、更新時は交渉力が強いタイミングでもある
- 物件は「2年総額」で比較するのが正解
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。更新料の有効性・金額は個別の契約内容によって判断が異なります。トラブルの際は消費生活センターや弁護士等の専門家にご相談ください。




