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家賃値上げの断り方|通知が来たときの正しい対応を営業が解説

家賃の上昇矢印をストップ標識が止めているイラスト

更新のタイミングで届く「家賃値上げのお知らせ」。ここ数年、物価や管理コストの上昇を背景に、家賃の値上げ通知は実際に増えています。

私は売買がメインの現役不動産営業(6年半)ですが、家賃値上げについては、実際にお客様から相談を受けることがよくあります。そのたびに、法的なことと業界の現実の両方を踏まえてアドバイスしてきました。この記事では、その相談の場でお伝えしている「本当のところ」をそのまま書きます。

目次

まず結論:一方的な値上げに「強制的に従う義務」はない

大前提として、家賃は貸主と借主の合意で決まるものです。借地借家法には賃料増減請求という仕組みがあり、貸主は増額を請求できますが、通知が届いた瞬間に新賃料が確定するわけではありません。あなたが同意しない限り、勝手には上がらないのです。

「拒否したら追い出される」も「更新できない」も嘘

値上げを断ると「では更新できません」と言われることがありますが、普通借家契約ならこれは嘘です。更新の合意がまとまらないまま契約期間が終わっても、法定更新という仕組みによって、従前の契約と同じ条件で契約は自動的に継続します。つまり、値上げに同意しなくても、今の家賃のまま住み続けられるのが法律の建て付けです。

(注意:定期借家契約の場合は期間満了で契約が終了するため事情が変わります。自分の契約書がどちらかだけは最初に確認してください。)

なぜ借主はここまで強気でいられるのか

正直に書きます。借地借家法は、理不尽なまでに借主に有利な法律です。「大家はお金持ちなんだから借主に配慮しろ」。そういう化石のような時代の考え方を土台に作られた法律が、今もほぼそのまま生きているからです。

現代では大家さんも普通のサラリーマン兼業だったりして、この前提はとっくに崩れています。それでも法律は借主の味方のまま。借りる側は、この歴史的な恩恵をフルに使っていい立場にあります。使わずに損をしている人があまりに多いので、この記事を書いています。

家賃値上げの断り方:根拠はいらない。「同意しません」でいい

ネットの記事にはよく「近隣相場を調べて、根拠を添えて丁寧に交渉しましょう」と書いてあります。ですが法律の構造から言うと、断るのに借主側が根拠を用意する必要はありません。

  • 「値上げには同意しません」
  • 「拒否します」
  • 「法定更新でお願いします」

返事はこれで十分です。根拠を示す義務があるのは、値上げしたい貸主側。増額を正当化する材料(税負担の上昇、近隣相場との乖離など)を揃えて、最終的には調停・裁判で立証しないといけないのは大家さんの方で、正直、貸主側はすごく大変なんです。

家本
根拠の説明が必要なのは、値上げしたい大家さん側。断る側は「同意しません」の一言で十分です。

ちゃんと断りたいなら「交渉に応じる姿勢」を見せない

ここは意外と知られていないコツです。本気で断りたいなら、「相談には応じます」「話し合いましょう」という姿勢を見せてはいけません。交渉のテーブルに着くこと自体が「増額の協議に応じる」というメッセージになり、着地点を探る流れに巻き込まれるからです。断る意思が固いなら、シンプルに「同意しません。法定更新でお願いします」を繰り返すのが一番強い。

ただし、この機会に住み替えも考えるなら話は別です。今の近隣相場がどれくらいか、引っ越しに費用がいくらかかるかは知っておいて損がありません(引っ越す場合の段取りは退去の流れ参照)。「断って住み続ける」と「これを機に引っ越す」を天秤にかける材料として使ってください。

合意しないまま更新時期が来たら:家賃はそのまま払い続ける

実務上とても大事なポイントです。値上げに同意しないまま更新日が来ても、従来の家賃を払い続けてください。「揉めているから」と支払いを止めると、家賃滞納となり、今度は借主側が圧倒的に不利になります。

貸主側が従来額の受け取りを拒否した場合には、法務局に供託するという方法が用意されています。そこまでの状況になったら、後述の相談窓口に入ってもらう段階です。

なお、更新のタイミングでは値上げとは別に更新料の請求も来ます。こちらは値上げと違って「同意しません」で済む話ではないので、相場と交渉できる範囲を賃貸の更新料の相場で確認しておいてください。

現場からのお願い:妥当な値上げなら、飲んであげてほしい

ここまで借主の武器の話をしてきましたが、両側を見てきた人間として、最後に本音をひとつ。

いまは固定資産税も修繕費も保険料も、大家さん側のコストが軒並み上がっています。オーナーが厳しいのも現実です。だから、値上げ幅が妥当な範囲(目安として賃料の5%程度)で、家計として払えるのであれば、飲んであげてほしいというのが現場側の正直な気持ちです。

法律上は断れる。でも、良い物件を良い状態で維持してもらうには大家さんの体力も必要で、無理な据え置きの果てに管理の質が下がったら、損をするのは住んでいる自分です。「断固拒否」一択ではなく、金額の妥当性で判断してもらえたらと思います。

余談:実際にあった、ひどい話

相談を受けたお客様の話です(特定を避けるため詳細はぼかします)。経済的に厳しいとのことだったので「同意する必要はないですよ」とお伝えし、その方も値上げを拒否されていました。ところがしばらくして、管理会社の社員らしき者が、その方のお子さんに嫌がらせをするというとんでもない事態が起きたそうで、その方は泣く泣く値上げに同意されました。

言うまでもなく、こんな行為は脅迫・強要として完全に違法の領域です。もし同じような目に遭ったら、泣き寝入りする前に、証拠(録音・記録・日時のメモ)を残して警察と弁護士に相談してください。戦う気があるなら、法的措置で悪質な管理会社を懲らしめてほしい。そう思う案件でした。こういう会社が実在するのが、この業界の残念な現実です。

まとまらないときの相談先

  • 消費生活センター(188)。対応の進め方の相談に乗ってもらえます
  • 自治体の無料法律相談・法テラス。法的な見通しの確認に
  • 簡易裁判所の民事調停。賃料の争いは訴訟の前に調停を経るのが原則とされています
  • 警察(#9110)・弁護士。嫌がらせなど実力行使をされた場合はこちら。管理会社と話し合う案件ではありません

相談先の使い分けは賃貸トラブルの相談窓口の使い分けで詳しく解説しています。

まとめ

  • 一方的な値上げに強制的に従う義務はない。拒否しても法定更新で同条件のまま住み続けられる(普通借家の場合)
  • 借地借家法は理不尽なほど借主有利。この恩恵は遠慮なく使っていい
  • 断るのに根拠は不要。「同意しません」「法定更新でお願いします」で十分。本気で断るなら交渉に応じる姿勢も見せない
  • ただし交渉中も家賃は従来額を払い続ける(止めた瞬間に負ける)
  • 値上げ幅が妥当(5%程度)で払えるなら、飲んであげてほしいのが現場の本音
  • 嫌がらせをされたら警察と弁護士へ。泣き寝入りしない

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。契約内容や個別の事情によって適切な対応は変わります。実務では判断が分かれるケースも多いため、具体的なトラブルは消費生活センターや弁護士等の専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

売買がメインの現役不動産営業(6年半)・FP3級。査定の現場で「売れません」と伝える側の人間。空き家・相続・退去トラブルの相談を受ける日々の中で見えた「本当のところ」を、忖度なしで書くために匿名で運営しています。

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