不動産会社に相談したら「この土地は売れませんね」と言われた。あるいは、売りに出して1年、問い合わせひとつない。
私は売買がメインの現役不動産営業(6年半)で、「売れない」と伝える側に立ってきた人間です。だからこそ言えるのですが、営業の言う「売れない」には実はいくつかの種類があって、その中身によって取るべき出口が変わります。この記事では、査定する側の頭の中から順に開いていきます。
営業が言う「売れない」は3種類ある
①「その価格では売れない」。実は一番多い
所有者の希望価格と市場の実勢が離れているケースです。とくに相続した土地では、「親が買ったときの値段」「固定資産税評価額」が頭にあって、実勢とズレていることがよくあります。
これは本当に多い。背景には「不動産=資産=ある程度お金になるはず」という意識があります。気持ちは分かります。ただ現実には、「その物件は、逆にお金をもらわないといらないです」と業者側が感じる土地も普通に存在します。
このタイプは、正確には売れない土地ではなく「値付けを間違えている土地」です。価格を実勢に合わせれば動きます。査定の現場では、ここの期待値調整が一番難しい仕事だったりします。
②「うちでは売れない(扱いたくない)」。会社の事情
ここは業界の内側の話です。仲介会社の報酬は成約価格に連動する手数料なので、低額の土地は、かかる手間に対して報酬が見合いません。200万円の土地を1年かけて売っても、手数料は数万〜十数万円。会社としては優先度が下がる、正直に言えば「扱いたくない」案件になりがちです。
それに、報酬だけの問題でもありません。安い物件ほど境界・接道・残置物などの事前調査が複雑で手間がかかるうえ、売った後のトラブルも起こりやすい。営業として正直、割に合わないと感じることがあります。忙しい大手の営業マンなら、媒介契約だけもらって実質放置、というのが現実のところでしょう。
「売れません」の何割かは「うちでは商売にならない」の意味だと知っておくと、断られたときに絶望しなくて済みます。その土地を専門に扱う業者に持ち込めば話が変わることがあるからです。
③「本当に市場性がない」。需要ゼロの土地
接道していない土地、急傾斜地、原野・山林、インフラのない地域の土地など、価格を下げても買い手が現れないタイプです。これが本当の意味での「売れない土地」で、後半で説明する売却以外の出口を検討する対象になります。
出口を探す順番:安いコストから試す
実務でおすすめしている検討順です。上から順にコストが安く、下に行くほど「お金を払って手放す」度合いが強くなります。
ステップ1:複数社に査定を出す(無料)
1社に断られただけで「売れない土地」と確定させないでください。上の②のとおり、会社によって扱う守備範囲が違います。地元の業者と、空き家・訳あり物件を専門にする業者の両方に当たるのが基本です。
一番良いのは、あなた自身の足で、地元の不動産屋を複数まわって査定を頼むことです。顔を見て話せば、その会社が本気で扱う気があるかも分かります。ただ、これは手間と時間がかかるので、一括査定サービスを使って窓口を広げるのもありです。
ステップ2:売り方を変える(低コスト)
- 隣地の所有者に声をかける。業界で昔から言われることですが、条件の悪い土地を一番高く買えるのは隣の人です。自分の土地と一体になれば価値が上がるからです。実務でも、市場で売れなかった土地が隣地との交渉でまとまる例は珍しくありません。特に、あなたの土地を買うことで隣地が再建築可能になるようなケースは、売り手にとって大きなチャンスです
- 価格を思い切って下げる・古家付きのまま出す。大事なのは「思い切って」の部分です。少しでも高く売りたいからと10万円だけ下げても、ポータルサイトに張り付いている買主には響きません。需要が少しでもあるなら、思い切った価格と条件の調整で動くことがあります
- 自治体の空き家バンク・農地なら農業委員会経由の斡旋。過度な期待は禁物ですが、コストはほぼゼロです
ステップ3:専門業者の買取・引き取り(物件次第でゼロ〜有償)
訳あり物件・売れない土地を専門に引き受ける業者があります。値段がつけば買取、つかなければ費用を払って引き取ってもらう(有償引き取り)形になります。「お金を払って手放すなんて」と感じるかもしれませんが、判断基準は「持ち続ける年間コスト×年数」との比較です。仕組みと業者の見分け方は空き家の引き取り・買取サービスとはで詳しく解説しています。
ステップ4:相続土地国庫帰属制度(相続した土地のみ)
相続で取得した土地なら、国に引き取ってもらう制度があります。審査手数料1.4万円+負担金原則20万円〜で、建物付き・境界不明などは対象外です。詳しくは相続土地国庫帰属制度は使えるかへ。
やってはいけない・期待しないほうがいい方法
- 「寄付すればいい」は基本通らない。自治体は管理コストになる土地の寄付をまず受けません。使い道のある土地なら、そもそも売れています
- 所有権の放棄はできない。不要な土地の所有権だけを一方的に放棄する制度は、現行法にはありません(相続前なら相続放棄という選択肢はありますが、全財産が対象です。土地だけ相続放棄はできない話参照)
- 「原野商法の二次被害」に注意。「あなたの土地を買いたい人がいる。ついては測量費・広告費を先に」という手口の勧誘があります。先にお金を要求してくる「買いたい」話は疑ってかかるのが実務の常識です
まとめ
- 「売れない」には3種類ある。値付けの問題と会社の事情なら、まだ売れる可能性がある
- 複数社査定→売り方の工夫(隣地・価格)→専門業者の買取・引き取り→国庫帰属、の順で安いコストから試す
- 寄付と所有権放棄は基本的に出口にならない。「先にお金」の買い取り話は疑う
- 比較の基準は常に「持ち続ける年間コスト」(負動産とは参照)
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【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。記事内にはプロモーションが含まれます。土地の市場性・処分方法は個別の条件によって大きく異なります。具体的な判断は不動産会社・司法書士・弁護士等の専門家や自治体の窓口にご相談ください。




